矢田立郎神戸市長

 「賀川豊彦献身100年記念事業 神戸プロジェクト」が2009年に開催されるにあたり、ごあいさつ申し上げます。

賀川豊彦先生は、神戸におきまして、福祉や医療などの分野で先駆的・創造的な取り組みを始められ、それが根付き、生活協同組合や労働組合など様々な形に発展いたしました。その活動は、神戸から全国各地に広がり、生涯にわたり、社会への奉仕を続けられ、私達の暮らしを支える根幹を築くことにご尽力されました。その思想の根底には、人のいのちや共に生きていくことの大切さが貫かれており、100年経過した今なお大きな力を持ち続けています。これまでも賀川記念館において賀川先生が大切にされた人のいのちの意味を伝承しておられますが、賀川先生が提唱された精神をさらに後世に伝えていくことが本事業の大きな目的であると理解しております。
そして、生活協同組合の理念を表現したことばである「One for all, all for one(一人は万人のために、万人は一人のために)」を貫徹していくことがこの事業のひとつの目標になるのではないかと考えております。

 賀川先生は、子どもたちには九つの権利があり、そのひとつとして、「食べる権利」について述べられています。私自身も、戦中・戦後の時期に、食べることの大切さ、大変さ、そして親が子を育てて実際に養っていくことの大切さ、そういったことを本当に味わってきました。それを今の子どもたちにどうすれば伝えることができるのか、を考える必要があると思います。

以前、今井鎮雄実行委員長から、賀川先生の思いを後世に伝えるためには、今その功績を検証する作業をやっておかなければ取り返しがつかないことになるということを伺いました。この度、賀川先生が神戸で活動を開始して100年目の節目を迎えるにあたり「賀川豊彦献身100年記念事業 神戸プロジェクト委員会」を立ち上げられたことからも、この大きな事業に対する実行委員会の皆様方の熱い思いをひしひしと感じております。

 これからの皆様方の取り組みが、次の世代を担う子どもたちに、本当の意味での生きることの重要さを伝えることができるプロジェクトとなり、さらに、より大きな形となって具現化することを期待しております。